そこにはただ風が吹いているだけ~1/14/2002・k272
日本の警察官が、安全保障上危険な、中国要人を失脚させるために中国に単身乗り込み、海上自衛隊の潜水艦で救出される、という荒唐無稽な話の底に、情報社会の不気味さがある。
敵と味方の区別がつけにくいのは、そこに歴史という時間の流れが絡んできて、それぞれの立場が、そよ風にゆれるモビールのように入れ替わるからだ。
しかし、それも事が身近に及べば、話はまったく違ってくる。守るべき家族を襲撃され、部下を殺害された主人公、峰岸智之44歳、体重80kg。利用していたつもりが操られていた、と思っていたら、実はアレがこうして、コレがそうならなくての権謀術数と疑心暗鬼の数々。
それでもやっぱり、信頼が絆であると信じていたい。だがそれも...
読後、自分には何のやましい所もないと思っていた人でも、尾行されていないか、つい後ろを振り返ってしまいそうになるだろう。
『ZERO』
麻生幾著 幻冬舎刊
上巻1800円 下巻1900円
Then and Now : タイトルは、シューベルツのヒット曲「風」の一節です。作詞は北山修。いま思い浮かべると、あまりの牧歌調にびっくりする。時代であった。人口が少なかったせいだろうか。しかし、団塊の世代の青春でもある。いつも背伸びをして、そういう兄貴姉貴の聞く歌を聞いていた気がする。
とはいえ、気持ち的にも、ぴったりに感じられたものだ。2007年には、その団塊の世代の退職がピークとなるらしい。
熊本日日新聞「私の3つ星」不採用。
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